ブリジットとクリスティーナを予約なのだ [長たらしい映画評]

ブリジット・ジョーンズの日記 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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ショッピングビルをのんびりだらだらと歩いていたある午後のこと、友人が「木谷ちゃんに似てる!」と声を上げた。彼女が指差した先に貼られていたのは、ブリジット・ジョーンズ(続編じゃない方の。)のポスター。グレイのミニスカートにブーツを合わせたブリジット嬢が、軽く前かがみになっているやつだ。なかなか可愛い写りではある、特に膝小僧のかたちが結構好みかも★

あいにく、ブリジット・ジョーンズの日記は見たことがないけれど、確か主人公が、ダイエットとロマンスという女子にとっての二大テーマのもとに奮闘する、親近感あふるるギャルズライフストーリィ☆ではなかったろうか?

私個人としては、ダイエットにも恋愛にもあまり必要性を感じていないので、似てると言われてもどう反応していいのか分からず、「ふぅ〜ん」と軽く流してしまったのだけど。ブリジットに似ているとは、どういう意味だったのだろうか。かわいいvという意味? 誉めていると受け取っていいのだろうか? 単純に外見が似てるということ?(って、レニー・ゼルウィガーさんに?)それとも、ライフスタイルのこと……?

近年、こういうところ(blog)でオフィスガール譚を書いていると、まんざらブリ嬢と私の間に共通点がないでもないのかも……と思わなくもない。以前なら、ドタバタラブコメにはとんと興味を示さなかったところだが、ちょっと覗いてみたいような気もしてきて、『ブリジット・ジョーンズの日記』をdvdの予約リストに入れてみた。
ついでに、『クリスティーナの好きなこと』も予約。こちらも女子の本音が爆裂する映画らしい。さて共感指数はどのくらいなのか、楽しみ。下品な下ネタも炸裂すると聞いているので不安はあるが、今ならそれはそれで割り切って見れそうな気がする。

クリスティーナの好きなこと ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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こういう映画を楽しめるのって、ほんとに女子の特権だよな〜と思う。面白ければ、もちろん男性が見てもかまわないけど、「あ〜、分かる分かる!」と膝を打つような感覚は、やはり同性だからこそ得られるものではないだろうか。

ブリジットやクリスティーナのように、いかにもオンナオンナしたノリの映画は気持ちが悪くて、ずっと避けて回ってきた気がする。自分の中にそういう部分があるということを認めたくなかったのだと思う。しかし近頃めっぽう平気。自分は女である、という事実を、自然に受け入れられる。昔は絶対に見れないと思っていたシーンでも、だんだん普通に目を開けていられるようになっていく。

もし金銭的な余裕ができたら、ブランド物のバッグなんか買って得意げに持ち歩いて、ネイルサロンに通いつめて料理もできないような激しいネイルアートなんかして、ケンカする機会があったらそういう爪で相手を引っかいて髪の毛引っ張って「キーッ」と言うような女になってみたい。一度くらいは。(二度はごめん。)

木谷梨子

2005-10-07 22:20:28 | Permalink | コメント(0) |

映画バトン [長たらしい映画評]

『mach mal pause?』のkirynさんより、シネマなバトンを頂きました。思いつきで答えちゃう。思いつくのに3分以上かかったのもあるけどね……それって思いつきって言えるのだろうか!? 映画は数をあまり見ていないから、問いに対してすぐにぱっと作品がひらめかないのが、もどかしい。
近年、レオス・カラックスやアンドレイ・タルコフスキーの作品などにも興味があるのですが、kirynさんも挙げていらっしゃるので、あえて重複を避け、別の映画を持ってきました。


★1.心に残り続ける映画

これからも私の中に残っていくであろう映画はどれか、とりとめもなく考えるのは楽しいのだけれど、いざ文字にしてはっきりと答えちゃう段階になってみると、とても難しく感じた。

裁かるるジャンヌ クリティカル・エディション 紀伊國屋書店
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ジャンヌ・ダルクの裁判もの。リュック・ベッソンが作った最近の作品じゃなくて、古い古いサイレント映画の方。映像だけにぐっと集中して観られた。クローズアップが多く使われていて、苦悩するジャンヌの表情が、静かに痛く、胸に食い入ってくる。昔見た映画なので詳しいことは忘れたけど……なんとも忘れがたい印象があるんだなぁ。

ベニスに死す ワーナー・ホーム・ビデオ
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風情ありまくりの水の都を舞台に、水のようにつめたくうつくしい美少年のまなざしが心臓を貫いてくる。口惜しいけどどきっとさせられた。彼に惹かれて(ストーカー化して)しまう老作曲家役のダーク・ボガードも、何ともいいお味。全篇に渡って流れるマーラーの音楽も相まって、しみるように感じた。映像と音楽が一体化している作品は、胸に響くし、記憶に長く残ると思う。


★2.愛する人と見たい映画

ゴッドファーザーDVDコレクション このアイテムの詳細を見る
ビクターエンターテインメント/CIC・ビクタービデオ

『ゴッドファーザー』(ヤクザもん)、『フレンチコネクション』(麻薬もん)、『イージーライダー』(バイクもん)など、ごりごりした感じのがいい。愛する人と映画を見る時、私にdvdを選ばせたら、わりと殺伐としたものを持ってくると思う。正面切ってラヴストーリーって感じのは避ける。
これはどういうことかというと、愛する人には、私のぼーっとしたりふわんふわんしたりくしゅくしゅっとなっちゃったりする可愛げ(★)な面だけでなく、私の中にあるハードな漢(おとこ)の部分を知ってほしいのだ。


★3.震えたホラー映画


オーメン〈特別編〉/オーメン2 ダミアン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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『オーメン2 ダミアン』だったろうか、高校くらいのときにテレビでやっているのを見かけてしまったのは。禍々しくてどっか宗教っぽいBGMがう゛わ゛〜〜っとかかったら、一瞬にしてぶつぶつの鳥肌になり、産毛が逆立つような感覚を味わった。

実は、「リング」とか「らせん」とか、ああいう誰でも知っているようなホラー映画を見たことがなくて、古い物しか分からない。でも、オカルト系も意外と好きなような気がする。ダリオ・アルジェントとか。あと、ドラキュラがかっこよすぎて、若い女性にかみつく吸血シーンがラヴシーンに見えてしまい、二重の意味で心が震える。


★4.バトン回す4人

どなたでも持っていって下さい。但し4人。

木谷梨子

2005-09-03 00:31:45 | Permalink | コメント(8) |

マイノリティ・リポート [長たらしい映画評]

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ
2002年 アメリカ映画

マイノリティ・リポート 特別編20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンこのアイテムの詳細を見る


フィリップ・K・ディックの短編が原作ということになっていますが、小説の設定だけを借りたアクション+サスペンスストーリーです。
スピルバーグ(監督)と言えば、一つにはジュラシックパークやインディジョーンズのような、「テーマパーク映画作家」というイメージが強いのですが、思えば「シンドラーのリスト」を作ったのもこの人で、編集で魅せるようなクラシックな映画も好きみたい。『マイノリティ・リポート』のコンセプトは、「フィルムノワール」です。青みがかったざらざらした感じの画面で、冒頭から眼球のイメージにこだわりを見せたりなんかして、トーン暗め。目の動きをスキャンされてプライバシーをむき出される社会を描くのに、そういう切り出し方をしたのは、なかなかテクニシャンですね。それに、作品舞台は未来ではあるけど、「あ、ヒチコックみたいなカラーも好きだったのね?」という、古いサスペンス映画の雰囲気も思い出させてくれます。
ここにかぶさるサウンドトラックがクラシック調で、やわらかい木管楽器の響きがかえって不安をそそります。安心できる生活のための土台が不安であるという、足元ぐらぐら感じがよく出ていると思います。

手法としてはOKだと思うけど、結果として、この作品は実験作の域を出ていません。シナリオに致命的なミスがあります。予知システムが高い実績を上げて犯罪を100%未然に防ぐことができるようになったはずが、なぜか一番の悪玉がし出かした殺人を摘発することができないのです。じゃあ、何かそいつを守るような秘策が用意されていたのかと考えてみましたが、そうなるとラストシーンが矛盾の爆発になってしまいます。
スピルバーグ監督は、「最後は自分の意志だ!」という明るさを捨てきることができなかったんですね。「未来は自分で選ぶ!」という結論でまとめに入ってしまいました。その明るさが救いになる娯楽作品もありますが、この映画は違うはず。強引なハッピーエンドでは、ダークな色合いで統一した意味がなくなってしまいます。この映画にあるちぐはぐ感は、監督の人がよすぎたせいかな。せっかくのフィルムノワールという着想が生きてこなくて、残念。

kotaniriko

2004-12-01 22:21:33 | Permalink | コメント(0) |

めぐりあう時間たち DTSスペシャルエディション [長たらしい映画評]

めぐりあう時間たち DTSスペシャルエディション
監督:スティーヴン・ダルドリー監督
出演:ニコール・キッドマン,メリル・ストリープ,ジュリアン・ムーア他
アスミック
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ぶっちゃけ(kimuratakuya)、よかった。
監督のセンスが素晴らしいということもある。原作が素晴らしいということもある。ヴァージニア・ウルフという存在が素晴らしいということでもある。煎じ詰めればウルフの小説『ダロウェイ夫人』が傑作だということでもある……。
素晴らしづくめの題材素材に、決して負けない女優群! 殊にジュリアン・ムーアの登場場面、私はほぼ全部泣いていた。泣かせるような場面でなくても、ちょっとした動作の端々に、揺さぶられた。なんか誉めてばっかりだ。近年の映画の中では一番興味深い作品だったかもしれない。
ただ、観たあとしばらく虚脱状態だった。もう一度『めぐりあう時間たち』を観る時には、私は体力作りから入らなければならないようだ。クラリッサと一緒にぼろぼろになってたから……。

凄い凄い言ってるが、それで一体どういう作品なのかが、一言ではとても説明しできないというのも、この映画の特色の一つ……。
この映画の宣伝文句を聞いていると、「あれ? そんな話だっけ?」…と、微妙なずれを感じることがある。分かりやすくまとめすぎて、まるで間違って薄めすぎたカルピスの味みたいで。確か、女たちが他の誰かはなく自分自身で人生を選んだとか、みょ〜に前向きな説明になっていたと記憶している。でも、私が観た限りでは、そんな前向きな内容じゃなかった。もしかすると私が見間違ったのか?

たとえば、ヴァージニア・ウルフのエピソードでは、冒頭で彼女は入水自殺をはかろうとしている。でも、結末近くでは、ロンドン暮らしに復帰を決めたりしてる。ローラ・ブラウンのエピソードでも、女が自殺を考え、それもほとんど実行されたような場面が映される。だが、そのあと彼女は生に戻ってくる。
あくまでも私個人の感想だが、この経過は、「彼女は死ぬのをやめて生きることにした」という一方通行的な展開ではないように思える。彼女たちが「死」に傾く世界と「生」に傾く世界、両方があって、別々にドラマが進行しているような印象を受けるのだ。多元宇宙式?
個々に流れている時間たちは、ずっと平行して流れ続けるわけではない。途中で合流する(=めぐりあう)こともあり得る。また、何かを決断しなければならないとき、どちらかを選んで答えを出した瞬間などに、切り離されることもあり得る。切り離された彼女の一部が、どこかでもう一つの人生を生きることをも想像させる。
何かを選択する瞬間には、選択されなかった側でも別の物語が生まれるのだ……。
やっぱり説明しづらい。助けてアインシュタイン。

クラリッサのエピソードだけが例外で、自殺を考えるのが彼女自身ではないし、女じゃない。死の扱いも、他の二人のようにファンタジックなものではなく、なまなましくて衝撃的である。でも、彼が死んだことで、クラリッサが解放されたようにも見えた。痛みを伴う解放。

kotaniriko

2004-12-01 16:20:03 | Permalink | コメント(0) |

トリコロール 青の愛 [長たらしい映画評]

キェシロフスキ・コレクションII 「トリコロール」セット よりジェネオン エンタテインメントこのアイテムの詳細を見る
トリコロール三部作の第一作、謎めく青の物語。かねてから「こんな映画を見てみたい」と信じ憧れてきた。はじめて見た時の「念願叶って」な感動の波は忘れがたいものがある……という、個人的に思い入れの深い映画。

冒頭で家族三人を乗せて走っていた車が起こした事故に、なぜか衝撃を受けなかった……というか、衝撃が強すぎて麻痺してしまいました。霧のかかった道に現実感がなくて、夢の中をそのままどこかに走り去ってしまうみたいな気がしました。そこから先、ずっと青い霧がかかっているような気分でぼ〜〜っとなりながら見ていました。三人そろって戻ってくることはできなくて、旦那さんとまだ小さな娘さんはそのまま旅を続け、ジュリーだけが二人を見失ってしまったみたいだった。生き残ったんじゃなくて、取り残されたよう。家族と一緒に旅に出ることができない。過去と決別しようとするかのように家を引き払い、新しいアパートに引きこもって暮らし始めるジュリー。ところが、夫が残した青の音楽が、彼女を世界に呼び止める……。寡黙な彼女は気持ちをほとんど表そうとしないけれど、心の内側まで写し出すような映像が美しく、つらく、胸に迫ります。

最初から死んでしまっているので出番がないだけに、旦那さんの存在がとても大きく感じられます。偉大にもとれれば人間くさくも見えて、浮気なんかして時にはつまらないヤツのようでいて、でも確かに何か惹きつける魅力を持っている……大きな男。彼に惹きつけられる女性も、そんじょそこらの女ではない、究極の女なんじゃないかな。ジュリーには芸術的な、音楽的な閃きがあるし、不倫相手だった女も「ああ、彼女がそうなんだ……」って納得させられるようないい女で。二人とも、男の持っていたきらめきに瞬時に反応できるような感受性、が、共通しているんでしょうね。
そういう夫と暮らした日々のかけらがまだ舞っていて、ジュリーの人生はかわり続けていて、これから他の恋人と生きていくとしても、捨てようとした過去はきっと捨てられないものなんじゃないかな? 彼は死んでしまった。死んだ人には誰もかなわない。彼は娘さんと一緒にそのままどっか行っちゃったんです。旅をしている。彼女は残って、音楽を完成させました。

青。こんなにたくさんの表情を持った色だとは。本当に印象的に作品を彩っていて。どんな青かというと……、もしかすると透き通った青と感じた人もいるかもしれないけど、私に見えた"絵"には、透明感はありませんでした。憂鬱のことをブルーっていうけど、ほんとに、穏やかに憂鬱で、優しく不安で、ゆらゆらしながらも毅然とした色。特に、ジュリーが泳ぐプールの青さが印象に刻まれました。自分の哀しみの中に潜っていく彼女、息苦しい青。
オリビエの愛し方もとても痛かった…この人の愛も青みがかってるしれません。彼に協力すると決めた時から彼女の生活はかわり、世界と調和が取れ始める。この、世界と調和がとれるという感覚が、私はすごく好きみたいです★

キャッチコピーの「何色ですか? あなたの愛」を真面目に受け止めて、あたしの愛は何色か、ちゃんと考えたんですよ! 緑かなぁ、と友達と話してました。でも、[トリコロール 緑の愛]じゃかっこわるくて使えない、ほんとに映えない……。とりあえず「綺麗そう」って言ってもらいましたが…失笑ものなのだ★

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以上、過去に他サイトに書いた文章をそのまま転載。

kotaniriko

2004-03-19 14:01:59 | Permalink | コメント(0) |

大脱走 [長たらしい映画評]


大脱走 [製作40周年記念特別編]20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
監督:ジョン・スタージェス
出演:スティーブ・マックィーン リチャード・アッテンボロー 他
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むやみやたらと昔のものをありがたがるのは好きじゃない。古ければ何でもいいってわけじゃない。しかしながら『大脱走』こそは、まことの古き良き時代の名画。

男たちの闘い。命がけの逃走劇。掘る。もぐる。走る。登る。ちくちく緻密に作りこまれてゆく脱走計画に、不謹慎と分かっていながらも、胸が躍るのを止められなかった。

第二次世界大戦中のこと。ドイツ軍の悩みは、ひっとらえてきた捕虜どもが、隙を見ては脱走をくわだてることであった。逃げられればまた捕まえてきて牢にぶちこむことになるが、そんなことしたらまた脱走しちゃって、それをまた捕まえてきてぶちこむことになるが、そんなことしたらまたまた脱走しちゃって、それをまたまた捕まえてきてぶちこむことになるが、そんなことしたらまたまたまた……、まだまだ。これが度重なれば、もはや牢に戻ってきても「ただいま!」ってな軽いノリで、何のための収容所なのか、意味をなさなくなってくる。
そこで考えられたX作戦は、最も脱走又は脱走未遂が多いパワフルな兵士たちを、最も警備体制の厳しい収容所にぶちこみ、徹底した管理下に置くことだった。さすがの脱走のプロたちも、ここでは監視の目を逃れることができない。しかし、そこであきらめるような奴らではなかった。一見すれば逃げ切ることが不可能と思われる環境におかれたことが、逆に彼らの心に火をつけたのかもしれない。「夢の250人一挙大脱走計画」がスタートする!
痛快というのは、まさにこの映画のために用意された言葉だと思う。

はじめは少しずつ、少しずつ掘っていた穴が、いつしか長いトンネルになったように。やけにこつこつと続けていた地道な努力が実を結び、ついにXデーをむかえて、そしてそして、大脱走につながっていく。
それまでは脱走といえば、彼らはおそらく目立たないように単独行動をとっていたのではないだろうか。そのワルたちが、今度は額を合わせて知恵を絞り、力を合わせて一つの計画を実行に移していく。その過程に見ごたえがないわけがない。映画の作りも非常に丁寧で、固唾を呑んで成り行きを見守っているうち、私は彼らに親しみを持つようになっていた。ある登場人物の台詞に心を重ねて、こちらも強く応援するようになった。何とか成功させてやりたい、と……。
このあまりにも大胆な逃走映画は、実話をもとに製作されたとのこと。250人全員が逃げ切るという目的を考えた時には、残念ながら達成までには程遠いものがあったが、これはドイツ軍の上層部をまさに錯乱、震撼させる大騒動だったと言えるだろう。

矛盾しているかもしれないが、脱走が実際には失敗したとしても、それはある意味においては失敗ではないのだ。真に恐ろしいのは、脱走を諦めて無気力状態に陥ること、完全に服従することである。しかし、ナチスなドイツ軍は、反乱の芽を摘み取ることができなかった。失敗したのはどちらだろう。雑草を力まかせにむしりとったとしても、種は既にばらまかれたあとである。残ったヤツらは、まだ逃げるだろう。何度でも逃げるだろう。それを止めることはできないのだ。ヒルツはまだ元気そうだ。それを見て、にやり。

でも、ちょっと思ったんだが、札つきのワルどもばかりを一つの場所に集めちゃったら、そりゃあ一騒動持ち上がらずには済まないよなあ……。
なんて野暮なことは言いっこなし。(でも、もう言っちゃったけど)

公式サイト

kotaniriko

2004-03-17 20:26:20 | Permalink | コメント(0) |

トリコロール 白の愛 [長たらしい映画評]

キェシロフスキ・コレクションII 「トリコロール」セットより
ジェネオン エンタテインメント
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引き続きフレンチでヨーロピアンテイストな愛の映画に違いないが、『白の愛』の舞台はパリからワルシャワへと移り、作品の肌触りも「青」や「赤」とどことなく異なっている。主人公のカロルと同じく、キェシロフスキ監督もポーランド人だったことが、うっすらと関係していそうだ。

鳥の糞、薄汚れた雪、汚い手を使ってでも手に入れる女、その白い肌……。白くて汚いものがたくさん映し出される。嘔吐もあり流血もあり、くりかえし痛めつけられるカロル。何度も何度も、画面に醜態をさらす。「愛の痛さ」「醜さ」「くるしさ」を存分に見せつけられてしまったが、一旦絶望したあとに、作品の奥底から不思議な暖かさ、親しみ深さがたちのぼってくるように感じられた。この映画は絶対、カロルのために、いまいち冴えない不細工なポーランド人の小男のために作られたものなのだ。

生きることは、楽しいことよりも苦悶と絶望の連続…である場合が多い、かも。
カロルの場合は、相手に捨てられたあげく惨めな目にあわせられながらも、忘れることのできない極上の女がいる。何しろ、ドミニクはいい。人生に成功しようとも失敗しようともかわらず、どうしても消し去ることのできない愛がある。
ミコワイの場合は、妻も子供も、そして多分愛も手に入れているが、その生活はヤクザな商売から成り立っている。身のこなしは大人の余裕たっぷり、恰幅のよい紳士なのに、なぜかどことなく悲しげなミコワイ。
カロルとミコワイの間には、奇妙な友情が芽生える。国外に脱出する時には、ミコワイがカロルを助ける。そして、人生に疲れて死を望んでいたミコワイを、今度はカロルが助けるのだ。カロルの銃には、弾と希望がこめられている。二人とも、それまでの自分に一旦死んでもらって、また新しく生き始める。
ちょっと「サスペンス劇場」してる成り行きも面白くて、もしかしたら、私はカロルとドミニクの恋愛の行方(こんな感じ)よりも、ミコワイとの友情の方に魅力を感じたかもしれない。地下鉄のホームで気配もなくすっと現れたミコワイには、40過ぎの男にしか出せないオーラがあって、ちょっとやられる。
このミコワイのように、死を意識しながら、絶望しながら、よれよれのくたくたになりながらも生き続けるという、この「終わりなし」を選択することにこそ、間違いなく意味があるのだ。

最近、私は起きることのすべてがある意味で「訴訟」であると考えるようになった。訴訟とは、戦いである。勝負である。
どうしようもなく情けなく、ものすごくしょぼくれていたカロルは、最初はこの訴訟に負けていた、明らかに。だが、ポーランドに戻ってからは、「死ねば苦しみは終わる」と考えていたミコワイに勝ち、彼を変えることができた。そして、かつては裁判所で「もう愛していない」と公然と言い放ち、彼を参らせたドミニクに対しても、ついに逆転勝利をおさめたのである。

kotaniriko

2004-03-15 23:33:29 | Permalink | コメント(0) |



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